朝、シワのないワイシャツを広げると「きょうも頑張ろう」という気になるものだ。でも、枚数が多いとクリーニング代もばかにならない。自分で上手にアイロンをかけるにはどうしたらいいのか。プロに教わった。(文・飯田 克志、写真・五十嵐 文人)
学生時代から姉にもらったお古のアイロンを持っていた。でも、十年以上の一人暮らしで、使うのはたまにハンカチをかけるときぐらい。「姉のアイロン」とワイシャツ持参で、東京都新宿区四谷の白馬クリーニング商会を訪ねた。講師は蓮見さん。 まずは手本。スチームを効かせて袖、衿、身頃の順番にかけていく。ワイシャツ一枚を仕上げるのに、説明を交えながらわずか2,3分という早業だ。いざ、挑戦。
最初に右袖。肩から剣ボロの部分にアイロンをあてる。「あっつ!」。早速シワが。すかさず蓮見さんが手のひらをアイロンのように走らせ、「業界では”火のばしより手伸ばし”というんですよ」とアドバイス。アイロンかけの前に手で生地の表面を整える。忘れてはならない基本作業だ。 続いてカフス。「カフスは表と裏、両面かけます。衿も同じ。いずれも生地が厚く、外に見える場所だからです」と蓮見さん。端から中央へかけるのがコツ。端を引っ張るとシワができにくい。 カフスを攻略すると、袖の仕上げであるタックづくり。ここが、最大の難所。左手で肩ヨークの下に走る縫い目を押さえ、右手でカフスの端を持って引っ張る。すると、袖に線が浮かぶ。その線と肩口をモチ、アイロン台に剣ボロが表になるように置くと、タックの線がくっきりでる。その上からしっかりとかける。この辺はプロの技だが、会得すれば確実にワンランクアップ。
次はワイシャツの顔ともいえる衿。ここでもポイントは「端から中央へ」。「シワが少しでもあれば台無しになる」と思い、アイロンに力を入れた瞬間、小じわが幾つもできてしまった。蓮見さんに「アイロンの進む方の衿の先端(剣先)を引っ張るようにかけてください」と言われ、もう一度。なるほど、シワが消えていく。折り畳まれる側は軽く、外に出る側はしっかりかけるのがコツだ。 胴体部分では、肩ヨークをきれいに仕上げたい。この部分は、アイロン台の角を使うのが一般的だそうだが、蓮見さんのは違った。シャツはアイロン台に置いたまま。アイロンの先端を使って、シャツの内側から肩の付け根部分にゆっくりかける。それからヨークのの中央部分へ。これは思った以上に簡単。後ろ身頃も内側からアイロンをかける。「背中側だからといって、ひっくり返してかけなくてもいいんだ」。アイロンかけの面倒臭いイメージが、一挙に吹き飛んだ。
2時間、職人の緻密な技に触れ、アイロンかけの奥深さを体感。自宅で洗濯したワイシャツだって「きれいにできる」という自信がついた。これからは「姉のアイロン」も少しは活躍しそうだ。
ちょっとした工夫で・・・(業界大手の白洋舎・鈴木昭彦工場部係長) Q 自宅にアイロン台がない場合は? A 机にタオルを敷くことで代用できるが、スチームの蒸気がたまって綺麗に仕上げるのは難しい。 Q アイロンをかけるタイミングは? A 繊維を伸ばすためにも生乾きの状態がいい。 Q ワイシャツのアイロンかけ、どの部分に記を付けたらいい? A スーツを来ても見える、衿、カフス、ポケットなどの胸の部分をしっかりと。