読売新聞の生活面に掲載されました

【記事内容紹介】

季節の変わり目に、衣服を着替え、たんすの中を整理する衣替えの季節。四季がはっきりした日本ならではの習慣だ。最近では、都市での生活全体が暖かくなったため、衣替えの時期がひと昔前より早くなっている。またクローゼットが普通の家屋でも一般的になり衣類の収納方法も変わってきている。

「今がクリーニング店の最も忙しい時期。最近は衣替えに伴う仕事のピークが以前より一か月早くなった」と、語るのは、東京.四谷でクリーニング店を営む蓮見稔さん。1950年に父親が始めた店の二代目だ。お彼岸前後から衣替えした冬物衣料がクリーニングに出されるという。

 

暖房機器の普及で室内は温暖になり、公共の交通機関なども発達して、寒さに触れる時間も減少する一方。そのため厚手の衣料を必要とする時期が短くなり、冬物をクリーニングに出す時期が年々早くなっていると、蓮見さんは推測する。
 「冬物衣料の内容も多様になり、厚手のウールなどに交じって、肌着のように薄いニットなどが増え、季節の見極めがつかなくなっています」

現在は六月一日に学校や警察、銀行などの制服が夏服に変わるが、平安時代には、宮中で旧暦の四月一日に冬の装束から夏の装束に着替えていた。また、早くも正倉院建立の時代から、丁字や白檀を衣料の防虫に使っていたことが知られている。
江戸時代に書かれた実用書「日本居家必用」には「樟脳はよく湿を去り虫を殺すを第一の能と」す、衣服の箱に薫べれば虫を生せず」という記述があり、このころから、衣類の保存にクスノキを原料とした樟脳が使われたことがわかる。

かつて衣類箱や和だんすが主だった衣類の収納スペースも、時代とともに様変わりし、洋服だんすやクローゼットが一般化し、服をつるして保存する家庭が多くなった。それに伴って防虫剤も変化している。家庭用品メーカーのエステー化学(東京)によると、衣類をつるして保存するようになり、半年に一度の防虫剤の交換忘れが増えたため、昨春から、一年間効果がある防虫剤を発売。今では全体の20%を占めるまでになった。

長引く不況で家計節約のために、衣替えした衣類を自宅で洗う人がここ数年増えている。前シーズンは「手洗いできます」というマークが付いた秋冬物の」ニット類などがよく売れた。オンワード樫山(東京)が昨季の秋冬物からスタートさせた女性向けブランドの一つ「自由区」では、ニットやジャケットなど商品の約七割が手洗いが可能で、家庭での洗い方を説明したパンフレットを売場で配った。
 季節感が失われ、衣類の整理の仕方も変わってきたが、衣服を大切にする昔からの習慣を通して季節の変化を楽しんでみてはいかがだろう。

【写真の説明】
 クリーニング店では、今が冬物の扱いのピーク。これからたんすに入るセーターやマフラーなどを一枚一枚丁寧に仕上げていく(東京.四谷の白馬クリーニング商会で)

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